
「統合失調症で子どもは出来るのですか?」
Xで、そんな質問をされた。
たぶん質問した人が知りたいのは、統合失調症という病気そのものよりも、「薬を飲みながらでも、普通に子どもを持てるのか」ということなのだと思う。
僕たち夫婦も、妊活を始める前にはかなり慎重になった。
奥さんはいわゆる多剤処方で、薬の影響が心配だった。そこで、妊婦の薬の相談をしている病院を予約し、2人で相談に行った。
昔は、妊娠中に風邪薬を飲んだだけでも中絶を勧められることがあったらしい。
そんな話を聞いていたので、僕は勝手にかなり身構えていた。
「薬を飲んでいるなら、子どもを諦めたほうがいい」
そんなことを言われるのではないかと、内心では少し覚悟していた。
ところが、実際に話を聞いてみると、医学は僕が思っていたよりずっと先に進んでいた。
現在では研究もかなり進んでいて、多剤処方であっても、胎児に影響が出る可能性はそれほど高くないという。
もちろん薬の種類や量によって話は変わる。ただ、海外で使われている、日本では考えられないほどの高容量の処方などを除けば、必要以上に恐れることはない、という説明だった。
僕はそこで、少し拍子抜けした。
長いあいだ病気をしていると、薬というものがいつの間にか「飲んでいるだけで人生を制限するもの」になってしまうことがある。
結婚も、仕事も、子どもを持つことも。
何かをしたいと思うたびに、「でも薬を飲んでいるし」と、病気のほうから先回りして人生に蓋をしてくる。
ただ、睡眠薬については少し事情が違った。
出生後の子どもが不活発になる可能性があるという説明があった。
実際、うちの愛息くんは生まれたときに哺乳力が弱く、NICUに入った。
医師からは「おそらく睡眠薬の影響だと思います」と言われた。
もちろん、それだけが原因なのかは分からない。薬の影響もあったのかもしれないし、単純に愛息くん自身の性格というか、生まれつきのペースもあったのかもしれない。
何しろ、今ではかなり伸び伸びと育っている。
赤ちゃんというのは、親がどれだけ心配しても、本人は本人の速度で大きくなっていく。
薬の相談をしてくれた先生は、ハイリスク出産を扱う産婦人科のかなりのベテランだった。
その先生は、これまで向精神薬の影響で子どもに障がいが出たというケースを、実際には経験したことがないという。
そして、僕の印象に残った言葉を言ってくれた。
「産みたいという気持ちを全力で応援するのが産婦人科医です」
僕らはその言葉を聞いて、この病院で産みたいと思った。
病院を選ぶとき、設備や実績だけではなく、こういう言葉で選ぶこともあるのだなと思った。
もちろん、すべてが安全という話ではない。
僕の主治医からは、妊娠中にてんかんを発症し、妊婦にはハイリスクとされるてんかんの薬をどうしても中止できず、その結果、生まれた子どもに循環器系の障がいが出たケースを聞いたこともある。
だから、「薬を飲んでいても絶対に大丈夫」と無責任に言うつもりはない。
薬の種類も量も、人によって違う。
だからこそ、自己判断で薬をやめるのではなく、妊娠や妊活について相談できる医師に聞いてみることが大切なのだと思う。
幸いなことに、今のところ愛息くんは、そんな親の心配など知ったことではないという顔で、伸び伸びと育っている。
統合失調症だから子どもはできない。
薬を飲んでいるから、子どもは諦めたほうがいい。
昔の僕なら、そういう言葉をどこかで信じていたかもしれない。
でも、実際に子どもを育ててみると、人生というのは病名だけでは決まらない。
もちろん簡単ではない。
薬のことも、体調のことも、出産のリスクも、考えなければならないことはたくさんある。
それでも、「子どもが欲しい」と思ったなら、その気持ちを最初から病気に没収させなくてもいいのだと思う。
まずは、妊娠中の服薬について相談できる病院で聞いてみる。
できることを調べてから、諦める。
僕はその順番でいいと思っている。
愛息くんを見ていると、ときどき思う。
僕たちはこの子を産むことができるかどうかを、あんなに真剣に心配していた。
でも本人からすれば、そんなことは知ったことではない。
今日も元気に、本人の人生を生きている。
親が勝手に心配して、勝手に安心している横で。





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